ロストワックス鋳造について、基礎知識まとめ!
みなさん、こんにちは。
これまで「ロストワックス鋳造.com」では、ロストワックス鋳造の特徴やメリットについて紹介してきました。このコラムでは、ロストワックス鋳造について、皆さんにより分かりやすく理解していただくために、カテゴリーごとに詳しくお伝えしていきます。
ぜひ、最後まで読んでいただき、ロストワックス鋳造の知識を深めてくださいね!
ロストワックス鋳造と他の鋳造法
ロストワックス鋳造でコストダウン
ロストワックス鋳造というと、
「あ~、ロウでモデル作って、なんだかセラミックの粉まぶしてそれを焼いてロウを溶かし出した後に、溶けた金属流し込む、あれね。」
「あんな手作業じゃ、いっぱい作れないやろし、ロウなんて精度出ないでしょ。」
という認識の方が多いのではないでしょうか?
確かに前半は間違いなくその通りなのですが、後半は想像の域を出ていないのではと思います。
もちろん手作業が多い工程ではありますが、小さな部品なら、ひとつのワックスツリ―にたくさんくっつけて、意外と大量生産できる工法でもあります。
例えば、5cm角以下程度の部品で有れば、月産数万個は生産できます。 逆に、手作業ならではと言えるのは、400mm角を超えるような大きな部品でも生産できることです。
ロストワックス鋳造とダイカスト鋳造の違い
ダイカストはご存じのように、金型を割る方向にしか穴や突起はできませんね。もちろん横穴開けるには、スライドコアを入れるなど様々な仕組みが開発されています。
だがしかし、機構が複雑になればなるほど、金型費が跳ね上がってきます。そのくせ、三次元形状の複雑なアンダーカットになると、正直できない形状も出てきますね。
ところがロストワックス鋳造であれば、アンダーカットでも、中空でも、それが三次元であろうとも3Dプリンターで作れる形状なら、どんな形でも作れるんです。つまり、物体としてモデルを作れるなら、絶対鋳造できるのがロストワックス鋳造なわけです。
では、「そんな複雑なモデルを作るのどうするのよ?」と思われるでしょう。ロストワックス鋳造のモデルは文字通りワックス(ロウ)ですから、複雑な形状も部分部分で製作して接合する事が簡単なんです。ちょっと溶かして貼り付けていけばどんな形状も作れますよね。
また、ロストワックス鋳造の金型へのワックス注入は大がかりな段取りも必要なく比較的簡単です。ワックスモデルがそのまま製品になるわけですから、金型の出来栄えもすぐに確認できてしまいます。
ロストワックス鋳造と材質
ロストワックス鋳造の材質について
「ロストワックス鋳造」は、ダイカスト鋳造や砂型鋳造の様にあまりメジャーな言葉ではありませんね。ですから、なかなかどんな材料の鋳造ができるのかご存じで無い方も多いのではないでしょうか。
有名な「ダイカスト鋳造」は、アルミやマグネシウムなど非鉄合金を鋳造するための金属製鋳型になります。つまり、700℃程度と材料の融点が低い材料を溶かして固める場合に向いています。
しかし、それらより高い融点の材料ではダイカスト金型がもたないため鋳造できません。一方、ロストワックスで用いられる鋳型は、セラミックなどの焼結体が材料であるため、非常に熱に強い特性を持っています。
したがって、炭素鋼やステンレスなど融点の高い鉄系合金の成形ができるわけです。昔から指輪などのアクセサリーでも多用されている鋳造法ですが、最近ではYouTubeなどの配信のおかげで少しブームになっています。ロストワックス鋳造である事を知らずに、目にしているかもしれませんね。
真鍮のロストワックス鋳造
真鍮と言うと「南京錠」と「5円玉」を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。できたての真鍮はまるで金のような色合いでピカピカで美しいですね。
でも、少し時間がたつと、酸化して「しぶーい」色になってきます。これがまたいいんです!
というわけで、真鍮鋳造した製品に、表面処理を何もしないで使われるものには香炉や燭台などちょっと高級な仏具に使われています。
年月がたつとしぶい色合いで歴史を感じさせてくれるのも良いですね。また、錆びにくいため水廻りの蛇口や配管にも多用されています。その他には装飾品にもよく使われています。
ステンレスのロストワックス鋳造
ステンレスを鋳造できる事が、ロストワックス鋳造の大きな特徴の一つですがロストワックス鋳造ならではのメリットがあることをご存じないかと思います。
まず、ステンレスという素材では、大きなインゴットがあまり存在しないんです。あっても限られた種類のステンレスで、10cm角くらいの棒材です。
つまり、2辺が10cm超える物体は切削で作れない大きさと言えるわけです。ではどうするかでうが、「無いなら、溶かして固めるか!」ってなるわけですね。
ロストワックス鋳造によるアルミ鋳造
アルミの鋳造と言えば「ダイカスト」でしょ。とお考えの方は多いと思います。確かに、世の中にあるアルミ鋳造品はダイカストが多いですね。
だがしかし、ロストワックス鋳造によるアルミ鋳造は、ロストワックス鋳造ならではのメリットがあるんですね。まず、ダイカストによるアルミ鋳造の課題を挙げてみましょう。
1.金型費が高い!
ダイカストで本型製作すると高いですよね。太陽パーツの特許製法ダイカスト・カセット・システムなら本型の約半額。とは言え、やっぱりそれなりのお値段です。
ロストワックス鋳造と試作について
ロストワックス鋳造の試作について
まず、試作と言っても製品の開発ステージによって試作部品に求められる機能は変わってきます。開発当初に行うハンドメイドでは、可動部の機能性能や面粗さなどの仕上げはあまり求められないと思います。
つまりできるだけ費用をかけずに、当る摺れるの確認、形状確認、あわよくば基本機能確認ができるように作りたいですね。それでも昔は作る手段が限られていたので、結局お金かけて、切削で1個か2個作るのがやっとだったんではないでしょうか。
今では3D_CADの発展とともに、光造形や3Dプリンターの登場で十二分にハンドメイド部品として目的を果たせるようになってきました。
さて、この段階でロストワックスをおすすめするかと言えば、いくら金型費が安いと言っても、それなりの金額とリードタイムが必要になります。ですから、このステージでは3Dプリンター使って下さい。
数個〜十数個レベルの試作鋳造に最適なラピッドプロトタイビングとは
数個〜十数個レベルの試作鋳造には、絶対おすすめの製法があります。その名も「ラピッドプロトタイピング (Rapid Prototyping)」!なんだかカッコいい名前ですよね。
「Rapid」は英語で「高速」って意味です。
関西人なら南海電車の「ラピート」を思い出したんじゃないかな。「鉄人28号」みないな電車ですね。(笑)ラピートはドイツ語なんですが、同じ意味なんです。「Prototyping」は英語で「試作」って意味です。よく「プロトタイプ」なんて言いますよね。
ですから、合体すると「高速試作」!・・・・・・まんまです。笑呼び方ですが、「ラピッドプロトタイピング」って長いので、業界では「RPシステム」と呼ばれる事が多いですね。
ロストワックス鋳造と関連する加工、部品
ロストワックス鋳造の機械加工
ダイカストも鋳造後の製品は、バリがあったり、精度の必要な面を出すため、そしてネジ穴を製作するためのタップ加工など、たくさんの機械加工が必要になります。ロストワックス鋳造においても、ダイカストと変わりなく、これら機械加工を施す事で高精度な製品に仕上げる事ができるわけです。
ダイカストで主に生産される金属は、アルミ、亜鉛そしてマグネシウムでしたね。実はこれらの金属は切削性が非常に良い部類の金属になります。
アルミダイカストなんてカッターでも手で削れますからね。また、マグネシウムは硬いのですが切削性は非常によいのです。
ロストワックス鋳造金型について
ロストワックス鋳造ってワックスモデルにセラミックコートして、鋳型を作るんだよね。金型なんて使わないでしょ。
そうですね、実際の鋳造工程に金型なんていりません。ロストワックスで言う金型は、いっちゃん最初のワックスモデルを作るためのモデル成形用の金型なんですね。
溶けたワックスを流し込んで、製品と同じ形状のワックスモデルをたくさん製造するための金型になります。溶けたワックスですから、樹脂の射出成型や溶けたアルミのダイカストのように鋳湯する材料の温度は比較的低い物になります。
参考に温度を書いてみると、
樹脂・・・・・・・・・・・・・・・160℃~350℃(材料が多岐にわたるので幅が広い)
アルミ・・・・・・・・・・・・・・約700℃
ロストワックス鋳造用ワックス・・・・・約55℃
セミロストワックス鋳造用ワックス・・・約35℃
どうですか、めっちゃくちゃ低いでしょ。カップ麺もできない。(笑)ですから、金型に使う鋼材もそれほど硬い金属でなくても良いわけです。
ロストワックスの熱処理
”鋳造品に熱処理なんているの?”
”機械加工後の熱処理のこと?”
なんて思われた方も多いかと思います。いえいえ、鋳造品でもいろいろな理由で熱処理をほどこす事が安定した良質なロストワックス鋳造品を提供する事ができるんです。
せっかくなので、「熱処理」についておさらいしておきましょう。
熱処理では、「焼き入れ」「焼きもどし」は有名ですよね。この2つの熱処理はセットで行うのが基本になります。それぞれ何のために行うのか解説します。
ロストワックス鋳造の用途
ロストワックス鋳造でできるアンダーカット形状
アンダーカットという言葉は、みなさん日頃から聞いていると思いますが、簡単に説明すると、「二面型で抜けない形状」です。
ん?まだわからない?では、「タイ焼きで、口の穴は作れないでしょ」ってことです。
そこで登場するのが、スライドと言われる金型構成ですね。二面割の金型の割れ目の横から別の型(スライドコア)を突っ込んでいる構成です。
このスライドコアはアンギュラ―ピンと呼ばれる斜めに生えたピンに沿って二面型が開くときに、スライドコアが横滑りすることで、真横に抜くんです。
だがしかし、スライドでもできない形状があるんですね。
例えば、二面型が開く移動量って限界がありますね。
アンギュラーピンはせいぜい25度までで生えていますから、二面型に開く移動量をXとするとスライドコアの移動量Aは、A=X*sin25ですね。
sin25=0.423ですから、二面型の開き量の42%しかスライドコアによる横穴は開けれません。
ですから、これ以上深い穴は基本的に作れないですね。
ロストワックス鋳造で作られる製品について
「ロストワックス鋳造で作られる製品」と題して、日頃どんな所で目にしているかをご紹介したいなと思います。ロストワックス鋳造の特徴を思い出してみてください。
・多様な金属が鋳造できる。
・アンダーカットや中空など複雑な形状の鋳造ができる。
・面粗度が美しく鋳造できる。
・砂型など他の鋳造法より鋼材に近い強固な鋳造物ができる。
製法は馴染みないけど、実はこれら特徴を活かした製品が身の回りにたくさんあるんですね。
ロストワックス鋳造と鋳造欠陥
ロストワックス鋳造の鋳造欠陥について
ロストワックス鋳造も成形品ですから、ダイカストやプラスチックの射出成型と同じ様な欠陥が発生します。ただし、その発生レベルは比較的低いとお考えください。
まず、代表的な鋳造欠陥ですが、以下の3種類に分類する事ができます。
1)鋳造そのものに起因するもの
2)設計形状に起因するもの
3)工程に起因するもの
それぞれ説明していきますね。
ロストワックス鋳造を動画で解説
ロストワックス鋳造のメリットや事例、特徴を動画で解説しています。是非ご確認ください。
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