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電気自動車(EV)とアルミダイカスト

2021.08.02

みなさん、こんにちは!
「ダイカストコラム」です。

今日はいつもと趣向を変えて、「電気自動車(EV)とダイカスト」について語ってみたいと思います。

実は、電気自動車(EV)でもアルミダイカストは非常に重宝されています。

まずは、電気自動車の必要要件を列挙してみましょう。

>>アルミニウムダイカストはこちら

電気自動車(EV)の必要要件

  1. 車全体が軽量である事
    内燃機関のエンジンに比べて、モータは非力ですし、電池の持ちを考えても最大の負荷である車重は軽いに越した事無いですね。
  2. 錆や温度特性など耐候性が良い
    これは屋外で使用する車ならでは条件ですね。さて、アルミってそんなに良いのか!?
  3. 一体化
    さて、何の事かわからないですね。
    詳細は読み進めてもらえると・・・なるほど!となること間違いなし。
  4. 製造の優位性
    これまた何の事か???とにかく読んでみてください!

1.車全体が軽量である事

では、「1.車全体が軽量である事」から解説していきましょう。

理由は既に書きましたが、「アルミって、鉄に比べて弱いじゃん!」って思われたでしょう。

はい、そうなんです。
鉄に比べて重量は1/3、でも、引張り強度も1/3。
単純計算だと同じ強度を担保するには、同じ重さになっちゃいますが、実際にはそうはなりません。

これまでの鉄では、材料が硬いため、複雑な形状を作り難いという難点がありました。
ですから、鉄ではたくさんの部材を溶接などで合体して、求める形状を作り込まないといけません。

したがって、鉄では複数の部材を結合するための結合代を設ける必要も出てきます。
溶接ならまだしも、ボルト締結になると、そのボルト/ナット重量も加算されるわけですね。

さらに、結合部と言うのは本来の素材強度よりも確実に劣ってしまいます。
ですから、その分余計に肉厚を増やすなど、重量のかさむ対応を強いられます。

他の製法でいうと、砂型鋳造など厚肉で非常に重量のある部材を鋳型する事になります。
でも、表面祖度がそれほど良く無いため、機械加工もたくさん入れざるを得ませんから 製造リードタイムやコスト的にも厳しくなります。

一方、アルミダイカストでは、鉄より柔らかい分、複雑な形状の部材を作り易いんです。
アルミで複雑な形状ができれば、鉄で必要だった複数の部材を合体するための無駄な形状を無くす事ができますね。

なので、引張り強度が1/3でも、鉄製と同じ重量まで増やす必要がないというわけです!

現実に、古くはホンダさんの「NSX」、今ではアウディさんの「R8」やテスラさんの電気自動車はアルミシャーシを採用しています。

ただ、アルミの溶接は非常に難易度が高く、専門業者さんで無いとなかなかうまく溶接が出来ないものなんです。

ちょっと、うんちくを語っておくと、

アルミは空気中ではすぐに酸化して、酸化被膜ができるんですね。
アルミそのものの融点(溶ける温度)は660℃なのに、この酸化被膜はなんと2000℃にもなるんです。

ですから、酸化被膜ができないような溶接技術が必要になります。
それに、アルミは熱伝導率が高いですね。お鍋にも多用されるくらいですから。

熱伝導率が高いと、溶接したい部分だけに熱が留まってくれず、すぐに熱が全体に伝搬されてしまいます。

そうすると、溶接点では十分な熱が得られず、溶接される前に全体が変形するなんて事も発生するんです。
さらにさらに、熱が加わるとガスが発生しやすい素材でもあるので、ブローホールと呼ばれる穴があいたり、溶接付近で割れが発生したりします。

ですから、強度的に保証するのもなかなか大変になります。

うんちくが長くなってしまいましたが、こういった理由から複数の部材を溶接するのではなくアルミダイカストによる複雑な形状の成型部材に期待が高まっている訳なんです。

では、最近流行りのマグネシウムはどうなの?と思われたと思います。

確かにマグネシウムはアルミよりも軽く、引張り強度も強いんですね。
だがしかし、マグネシウムは靱性が低いんです。

ですからヤング率はアルミの2/3以下で、少しの曲げで曲がるのではなく割れてしまう可能性が高くなります。
様々な衝撃が加わり易い車での使用には向かない材料と言えます。

また、マグネシウムは非常に腐食しやすい素材である事も有名です。
鋳造直後に化成処理などの表面処理を行わないと白く劣化します。

さらに、化学処理は高価な装置や人体に影響のある処理薬品の使用が必要であり機械加工後の切削粉は発火や爆発の危険性も高いため、環境には優しくない素材です。

2.錆や温度特性など耐候性が良い

続いて、「2.錆や温度特性など耐候性が良い」を解説しましょう。

一言でアルミと言ってもたくさんの合金があります。
純アルミと呼ばれる1000番台から超剛性の高い7000番台(超超ジュラルミン)まで使用用途に応じて選ぶ事ができます。

その中には、剛性だけでなく耐候性の強い合金もあるわけですね。

先ほどの項で話した、酸化被膜と相まって、耐熱性や錆にも自然と強くなる特性も有りますし、さらに化学処理を施す事で、アルマイトなど多孔強化膜を形成する事も可能です。

もちろん、色を付ける事も出来ますね。

もう一点、これは今はまだよくわかっていないのですが、モータを使用しますから磁場の影響を必ず受けるはずです。

アルミは非磁性体ですから、磁化する事で悪さをしてしまいそうな箇所にも問題無く使用していく事が可能ですね。鉄なんて、磁石に触れるだけで磁化しちゃいますから、こういったメリットも考えられます。

3.一体化

次に、「3.一体化」の解説です。
1項で溶接せずにアルミダイカストで複雑な形状を作れるお話をしましたが、まさにこの部分ですね。

つまり、複数の部材を一体化してアルミダイカストで作っちゃおうという事です。

現状では、使用デバイスの筺体などが主にアルミダイカストの対象になっています。

例えば、EVモータのケース、電源インバータのケース等です。

ただ、テスラさんのように高級な車では、全体を支えるシャーシ部材もアルミにする事で軽量化していますね。
ただし、難易度の高い溶接などもあるため、製造コストが高くなり
高級車にしか適応できていません。

そこで、出来るだけ大きな部材の一体化によるアルミダイカスト化が求められる訳です。

相当大きな金型が必要になりますが、普及電気自動車の長い航続距離の実現と安価な製造コストのためにも、今後の大型ダイカスト鋳造は必須の技術革新と言えます。

4.製造の優位性

では、最後です。
「4.製造の優位性」を解説します。

これは3項とも関係性のある話になりますが、ダイカストの優位性を考えるとすぐに理解して頂けると思います。

「画一的な部材を、安定して、量産できる」というメリットです。

鉄で製造しているシャーシなどでは、それぞれの部材の部品精度や、組込溶接時の組立誤差など、部材が多ければ多いほど様々な誤差成分が乗って来ます。

つまり、完成時の車の精度バラつきは、有る一定までしか抑える事は現実には難しくなります。有る程度許容しなければ、歩留まりが悪くなるだけですね。

そう言った点でも、アルミダイカストで出来るだけ大型の一体成型品ができればこれら部品誤差や組立誤差を最小限にとどめる事ができますね。

結果、完成品である車の精度が良くなることで、全体の剛性アップや気密性の向上、外装部材のスキマなどの軽減、突き詰めれば安全性の向上にまで影響する可能性を持っています。

最後に

いかがでしたか?
単に航続距離を伸ばすためにアルミで軽くしましょう!ってだけじゃなく副次的に様々な貢献ができそうではありませんか。

今後のアルミダイカストの発展で自動車社会も変える事が出来そうです。
ぜひ、ご期待下さい。


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