チル層の役割と破断チル層の対策とは
みなさん、こんにちは!
「ダイカストコラム」です。
今日はダイカストにおける「チル層」について語りたいと思います。
「チル層」…ダイカスト鋳造している方以外には馴染みのない言葉かもしれませんね。
この「チル層」はダイカストにとって重要であるとともに、不具合を起こす要因にもなるんですね。
そこん所をいっしょに学んでいきましょう。
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「チル層」とは
ちょっと専門的なお話をすると、ダイカストは溶けたアルミ材料を金型のキャビティ(製品形状のコア)内に射出します。
この溶けたアルミ材が金型に接触する時に、触れた面が急冷される事で、結晶化した物質が析出して固まる層の事を「チル層」といいます。
では、どういった物質が結晶化するかというと、ダイカストでよく使う「ADC12合金」などは,ケイ素量が9.6~12.0%含まれます。
これは「Al-Si2元系合金」の共晶点である12.6%に近いため、アルミ材を溶融することで、溶けたAl元素とケイ素元素が結合して結晶化するのです。
一方、「ADC10合金」などケイ素量が少ない材料では、凝固温度範囲が広がって「デンドライト」(樹枝状固体)が成長した組織になります。
このケイ素はご存じのようにシリコンですね。
シリコンにソーダを混ぜると「おいしいシリコンソーダ」、、、いやいや、「ガラス」になることはよく知られています。
ケイ素は他の元素と共有結合しやすく、結合すると硬い物質になりやすい性質を持っています。
また、溶けた物質中で冷えるときに、結晶化されたものが析出されるのは「氷」と同じです。
コップに入れた水を冷凍庫に入れると、最も早く固まる(結晶化する)のが冷たい空気に触れる上っ面ですよね。
次にコップに触れている部分になり、真中はなかなか固まりません。この現象と同じなんです。
「チル層」の役割
この「チル層」は「Al-Si2元系合金」を主原料とします。
では、「Al-Si2元系合金」とはどんな性質なのか気になりますよね。
前述したように、ケイ素と共有結合した物質ですから、非常に硬い性質を持っています。
つまり「チル層」によって、ダイカスト製品の表面強度が高くなっているのです。
当然、機械加工でたくさん削ってしまうと、「チル層」が無くなり表面強度が下がると言う事があります。
超高精度が必要でないなら、出来るだけ削らない方が、強度にもコストにもやさしいと言えますね。
ただ、「チル層」厚みは境界が明確でなく、物性での判定も難しく、硬さで推測するしかありません。
したがって、ここで活きてくるのが鋳造技能者の腕の見せどころになるわけです。
「破断チル層」とは
さて、ここまでは「チル層」のお役立ちについて話しましたが、いかにも悪そうな「破断チル層」について解説します。
キャビティ内で製品表面にできる「チル層」は硬くて表面強度を確保するにも重要でしたが、キャビティに到達するまでの
射出スリープ壁でも同じように「チル層」が形成されます。
そのキャビティ外で形成された「チル層」が溶湯射出の勢いで破断され、キャビティ内に送り込まれた物が「破断チル層」と呼ばれます。
ですから「層」と言ってますが、鋳造製品内に取り込まれた硬い塊と思って下さい。
キャビティ内では「破断チル層」まわりに応力集中が発生しやすくなり、製品の強度不足や変形の要因になってしまうのです。
この対策として、射出スリープを保温するなど考えられますが、溶湯の射出する温度条件がくずれてしまうなどの弊害もあり対策は難しいと言われています。
ここで具体的な対策は、注湯温度の管理、ゲート形状、鋳造方案の変更などもっと詳しく書きたいところですが、、、
「やはりここはブラックボックス技術!」そう簡単には教えられません。笑
ということで、「どういうわけか、ダイカストの強度が出ないんだよなぁ。」とお悩みのみなさま。ひょっとしたら「破断チル層」が悪さしているかもしれません。
こんなときは、「太陽パーツ」に「何とかしてくれ!」とご要望下さい。
きっと満足の製品をお届けできること間違いなしです!
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