鋳鉄
鋳鉄は鉄を主成分に炭素、ケイ素を含む鉄合金の総称です。多くの炭素を含んでいるため融点が下がり低い温度で溶解します。そのため比較的容易に型へ流し込み成形することができます。そのため鋳物に使用される頻度が高く、生産量が非常に多い材質です。熱伝導が良く、熱衝撃に強い、潤滑性に優れ、切削加工が容易である点などに特徴があります。さらに熱処理などを行うことにより強度特性を変化させることができます。
鋳鉄を材料とする場合に選定される工法
- ロストワックス
- 消失模型
- 砂型鋳物
鋳鉄の種類と特徴
鋳鉄は種類によって特徴が異なります。
各種特徴は以下の通りです。
▼ 横スクロールでご確認ください
ねずみ鋳鉄品 | 特 徴 |
---|---|
FC100 | ねずみ鋳鉄品のうち、別鋳込み供試材の引張り強さが100以上と規定された、普通鋳鉄品です。鋳造性がよいかわりに、脆い材料です。 |
FC150 | 普通鋳鉄品に分類されるねずみ鋳鉄品で、最低の引張強さが150以上と規定されています。 |
FC200 | 黒鉛のおかげで切削加工や研削加工はしやすいですが、塑性加工、溶接には不向きの材料です。 |
FC250 | 普通鋳鉄品のなかでは最も引っ張り強さの高い鋳物です。振動を吸収する利点や熱衝撃に強いかわりに、引張り強さが弱いのが難点です。 |
FC300 | 強靭(強じん)鋳鉄品に分類されるねずみ鋳鉄品で、高級鋳鉄品とも言われ耐摩耗性に優れた強じんな鋳鉄品です。 |
FC350 | ねずみ鋳鉄品の中では、最も引張り強さが高い材料になります。 |
球状黒鉛鋳鉄品 | 特 徴 |
---|---|
FCD350-22 | 球状黒鉛鋳鉄の一つで、最小引張強度350MPa以上で、靭性に富んだ鋳鉄です。 |
FCD350-22L | 球状黒鉛鋳鉄の中で3種類だけある低温衝撃値が規定されたタイプで、氷点下での衝撃を受けてどれくらいのエネルギーを吸収できるかが規格の鋳鉄です。 |
FCD400-18 | 最低引張強度が400MPa以上である材料です。黒鉛が片状となっている通常の鋳鉄よりも耐磨耗性も優れます。引張強さと延性の双方が必要な用途で活躍します。 |
FCD400-18L | 低温環境での衝撃値が規定されたタイプです。鉄鋼系素材はどれも低温脆性がありますが、この材料については、-20度前後における耐衝撃値が規定されています。 |
FCD400-15 | 400は最小の引張強さを示し、続く15は最小の伸びをパーセンテージで示しています。球状黒鉛鋳鉄は降伏点と引張強さの差の大きい、いわゆる低降伏比型の材料となっています。 |
FCD450-10 | 鋳鉄の中でも強靭で、強度に優れると共に破壊されにくいタイプです。 |
FCD500-7 | 500MPaを最小引張強さとしているため、それが記号にも示されています。7は最小の伸びをパーセントで示したものです。力が加わっても、組織を構成する球状の黒鉛のおかげで、黒鉛に沿った亀裂が生じにくい構造をしています。 |
FCD600-3 | 溶かした鉄にマグネシウムなどの添加元素を加えることで、金属の組織内部に球状をした黒鉛が存在する鋳鉄です。一般的な鋳鉄に比べて強度や延性に優れています。 |
FCD700-2 | 普通の鋳鉄に比べて強靭なのは、組織内に晶出する球状となった黒鉛のおかげともいえます。700MPaを最小の引張強さとしており、強度面でも鉄鋼と遜色のない使い方ができます。 |
FCD800-2 | 同種の中では素の状態で最も強い引張強度をもつ材料となります。球状黒鉛鋳鉄は強度が高いだけでなく、延性にも優れる材料であるため、用途が多岐にわたります。鋳鉄本来の性能である耐磨耗性も健在です。 |
鋳鉄の特徴
1. 硬さ・耐摩耗性に優れる
鋳鉄は炭素量を多く含んでおり鉄や鋼と比較して硬度が高く強度に特性があります。一方で靭性には劣るためもろいという点も特徴です。また高硬度であるため摩耗性にも強い耐性を持っています。
2. 加工性が高い
鋳鉄は一般的な被削性を持っており、切削加工が容易に行える金属です。鋼やステンレス鋼と比較して切削抵抗は低いです。一方で硬度が高いため工具選定などは最適なものを選択する必要があります。
3. 鋳鉄の種類によって異なる特性を持つ
鋳鉄は複数の種類があり、目的によって最適なものを選択可能です。硬度が高いものや靭性にすぐれたものなど幅広く選ぶことができます。